劇場版SHIROBAKO感想

劇場版SHIROBAKO 鑑賞してきました。

公開日の翌日と、その翌週の、合わせて2回。

 

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入場特典は、1週目が太郎&平岡ちゃん、2週目がみゃーもりでした。どっちも推しの色紙だったので嬉しかったです。まぁ特典のデザインに載るようなSHIROBAKOのキャラって好きなキャラしかいないので、誰の特典でも嬉しかったんですけどねw

3週目以降の特典に遠藤夫妻か、遠藤&下柳の色紙とか配分しないかなぁ……とか思ったりw

 

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さて、テレビシリーズ終了から4年。待ちに待った劇場版でしたが、率直な感想を言うと……期待以上の面白さに号泣しました。

外連味のあるキャラクター達。彼らの必死さが伝わってくる数々のマシンガントーク。リアリティのある世界観。コメディとシリアスが良い塩梅で共存したストーリー。それらのテレビシリーズでも見所だった良さを残しつつ、しっかりと劇場版として上手く纏まっていました。しかし、テレビシリーズを踏襲しただけではなく……というのは順番に後述してゆくとして、とにかく本当に素晴らしい、後世に残る映画だったと思います。

 

というわけで、あまりの熱量で語りたいけど、Twitterでネタバレ発言をするわけにもいかないので、ここに映画の感想を纏めてみました。

先に話しておくと、途中「京都アニメーション」の、例の事件に触れながら感想を綴っている部分があります。自分でもこじつけだなと感じつつも、そう思わずにはいられなかったので書きましたが、もしこの感想を読んでくださる方の中で気分を害してしまう方がいるかもしれませんので、先に謝っておきます。ごめんなさい。

駄文で申し訳ないですが、最後まで読んでもらえると嬉しいです。

 

 

1.冒頭〜ミュージカルシーン

 

今作は3部構成に区分できると思いましたので、まずはその序章、ミュージカルのシーンまでの感想を。

 

予想はしていたものの、冒頭からショッキングな展開のオンパレード。タイマス事変をきっかけに、ばらばらになっていったムサニの状況に、胸が締め付けられる思いでした。しかし、ばらばらになったと言っても、その殆どがフリーランスへの転身や、他の会社への異動など、悪い方向(アニメ業界からの離脱)では無かったのが本当に救いで、その点に関しては、やはりまだ実際よりはホワイトな世界観だなと感じましたが。それでもやはり、丸川さんはムサニを存続させる為に辞職しましたし、テレビシリーズで一致団結していたメンバーが散り散りになるというのは、余りに痛烈でした。

あれだけ苦労してみんなで完成させた三女も、あんな形で二期として放送されるなんて、ショック以外の何物でもありませんでした。しかも、テレビシリーズではその雑な仕事ぶりで宮森たちを苦しませた、あのスタジオタイタニックが元請けとは……もう視聴者をドン底に突き落とす気満々な展開でした。エロ全開のコメディで、ここまで憤りと絶望を感じさせるとは、ホント水島努監督只者じゃないです。

 

4年間ずっと頑張ってきた宮森が丸川元社長のカレーを食べながら泣くシーンで、もうこちらも涙を我慢できませんでした。家で呑むお酒のアルコール度数が上がっていたことからも、宮森がどれだけ苦労してきたかというのも伝わってきましたが、この時見せた涙は、その4年間で溜め込んできた宮森の辛さや悲しみを感じることが出来るシーンだったと思います。

ここで宮森が凄いのが、ただ本当に「アニメが好き」というだけで、ここまで仕事を続けられていたこと。それはテレビシリーズ最後の、宮森の主張ではありました……が、同時に自分が、このSHIROBAKOという作品の〆として引っかかっていた部分でもありました。

そしてその個人的に感じていた違和感に、丸川元社長の台詞が全て答えてくれました。

「好きなだけでは必ず破綻する。その先に、自分は何をしたいのか」

宮森はずっと「アニメが好き」という感情を原動力に仕事を続けてきた女性でしたが、結局テレビシリーズの最後では、その仕事での「目的」は深く語られませんでした。なので、テレビシリーズを観終わった直後は、あぁ宮森はこれから、仕事の目的を模索するんだろうなと、まだ宮森の戦いは終わっていないなと、そんなことを考えていたのですが……やはり劇場版では、そこに触れてくれましたね。

現に宮森はこの時、自分がアニメを好きで仕事を続けているという状況に、無意識に疑問を抱いていました。姉かおりの「好きな仕事を続けて忙しいなんて羨ましいね」という旨の発言に苛立ちを覚えるシーンもですが、この丸川社長とのやり取りの後のシーンになりますが、本田さんの「1日48時間あれば良いのに」という旨の台詞に対して疑念を抱き、思わず口を塞ぐシーンは特に印象的でした。あの瞬間、宮森自身が自分の原動力を見失いかけていましたよね。

好きなだけでは続けられない。破滅へと進んでいた宮森でしたが、その絶望の中で丸川元社長に光を灯してもらい、そしてその光は、今作のテーマの根幹になってくる部分にもなりました。

 

そんな状況下で、突如舞い降りた無理難題な企画「空中強襲揚陸艦SIVA」

この企画を受けるか否かで宮森が葛藤するわけですが……個人的にはここのシーンが、序章で一番大事な部分だったと思います。

というのも、ここでの会話……正確には、ここのシーンからミュージカルのシーンまで、SHIROBAKOの代名詞でもあるマシンガントークとは打って変わって、台詞の「間」が印象的なんですよね。マシンガントークは、それはそれでキャラクターの必死さが伝わってきて魅力的な掛け合いなのですが、それを敢えて外して、よりリアルな会話に仕上げている。SHIROBAKOとは思えないくらい、日常的な雰囲気を作っていたんですよね。敢えて持ち味であるハイテンポを崩してまで。

更にその日常感を出す上で、このケーキ屋さんの窓から見えた「外」へのこだわりが欠かせませんでした。徐々に雨が上がってゆき、光が差仕込んでゆく空も印象的でしたが、特に素晴らしかったのが、外を歩く人々。

ここに至るまでの場面で、みーちゃんに「モブでも丁寧に動かさないと、見ている人はしっかり見ている」という旨の台詞があるのですが、このこだわりこそが、日常感を出す上で必要不可欠な作業であり、それはアニメに置いて最も難しい技術なんですよね。ここに関しては、テレビシリーズにて平岡と円さんが喧嘩した場面でも言えたことですが、今回の劇場版では、そのこだわりに対するアンサーを見せてくれたと同時に、日常アニメの価値も見出してくれていたように感じました。

外連味溢れる派手な作画や演出というのは、アニメならではの良さで大事ですが、それと同じくらい日常感を出すというリアルへの追求も、アニメに置いて大事なことなんだと。アニメには、嘘(アニメ)を真実(現実)に見せる力があるのだと。いやその気になれば、嘘は現実を超えるのだと。そんな主張を、このシーンから感じました。それくらい、明らかに作画が凄まじかったです。

そして、このムサニの置かれている、アニメをまともに作れなくなったというどうしようもない状況と、本作で日常感を描くという挑戦が同時に入り混じったこのパート。邪推だと分かっていても、自分は京都アニメーションのことを連想してしまっていました。

圧倒される程リアルな日常シーンを描くことを生業とし、高い技術力で世界中から注目を集めていたアニメ会社が、あってはならない形で、劇場作品やその後に控えていたテレビシリーズの制作を中止するという事態になってしまった。

本当は、今更このことについて話を掘り起こしても、自分や、多くのファン、そして何より関係者様の傷を抉るだけのように思え、語りたくはない気持ちもあります。しかし、本当に本作にそのような想いが込められているかどうかは分かりませんし、言及する気も毛頭ありませんが、このケーキ屋でのシーンには、その京都アニメーションがいかに素晴らしい技術を持っていたのかという尊敬と、そして、そんな悲惨なことがあった後でもなお立ち上がろうとしてくれている京アニへの、PA.WORKSからの応援のメッセージが込められていた、そんな風に個人的には感じてしまいました。

絶望した葛城さんに対して、宮森が「とりあえず、生きれば良いと思います」と言ったのも、ギャグテイストではありましたが、思い返せばあのシーンも軽く流せる部分ではないなと、個人的に解釈してしまったりもしました。

自分も、子供の頃から京アニが大好きですし、またPAの堀川社長が京アニへの応援メッセージを送っていたということもあったから、思わずこのようなことを連想してしまったというのはあります。ただの妄言だとも思います。なので、誰かとこの感想を共有したいわけでもありません。実際にPA.WORKSがそのような想いをこの作品に込めたと断言するつもりも、ありません。

ただ、ここに書き記すことで、未だに少し当時のことを思い返している情けない自分にケリをつけたかったんです。関係者でもないくせに何で悲しんでるんだよ、と。丸川さんの言った通り、前を向いて進まなくちゃ、と。

かなり本作の感想から脱線してしまいました。すいません、軌道修正します。

 

丸川元社長からの励ましがあったお陰もあり、舞い降りた企画を受けることを決意し、再び心に火を灯した宮森。自身を鼓舞するため、ミムジー&ロロと共に歌い始めますが、途中からこれまで彼女を支えてくれたアニメキャラ達が登場し、ミュージカルが始まった瞬間、思わず涙が出てしまいました。

勿論、宮森が、あのアニメが大好きな宮森が、戻ってきてくれたということもありますが、やはり前述でも話したように、ここもまた京アニへのエールになっている気がしてならなかったんですよね。

「アニメを作りましょう」

このフレーズを連呼するところで、初回は周りの人が楽しそうに見ている中、涙で前が見えないくらい泣いてしまい、ドン引きされていてもおかしくなかったなぁ……と、妄言混じりな感情ゆえに、少し反省気味ですが。

勿論このフレーズは、その京アニに対する個人的な想いを除いて考えても「今自分が成すべきことを全力で完遂しましょう」という主張のメタファーであり、我々視聴者への応援メッセージになっていたと思いますし、実際そういう意味でも、自分にもかなり突き刺さりました。

かなり人を選ぶ演出パートだったと思いますが、絶望の中に差す一筋の光のようなものを感じて、序章のラストを飾るに相応しいパートだったと思います。

このミュージカルのシーンで、一気にこれまでのSHIROBAKOらしいハイテンポに引き戻したのも、さすが水島努監督といった感じですね。

 

と、序章が一番長い感想になってしまいましたが、現に今作で個人的に最も魅入ってしまったのは、このミュージカルまでの流れでしたね。今から綴る第二幕も大変面白かったのですが、正直序章ほどのインパクトが無く、不満とまでは言わずとも、この章で終わっていたら、評価は下がっていたかもしれない……と、そんな感想を抱くのですが、映画をご覧になった方ならば、この後自分がなにを言いたいのか、分かっていただけていると思います。

 

2.ムサニ復活

宮森が復活し、次々と集まってゆく、元チーム・ムサニ!様々な困難が待ち受ける中、着実に進んでゆく企画!最後の最後に悪役の魔の手が伸びるも、宮森と新キャラ宮井の2人が敵陣に乗り込み撃破!一件落着!

要するに、テレビ版の面白さがそのままそこにあったんですよね。一番SHIROBAKOらしいパートとも言えます。

 

個人的には、テレビシリーズの頃から遠藤さんが大好きだったので、彼をムサニに復帰させるまでの流れは本当に見ていて楽しかったですね。

遠藤さんと下柳さんがタメ口をきいているのも最高でした。テレビシリーズでは敬語でしたが、イデポンの話で盛り上がる中で、いつしか仕事仲間としてだけでなく友人として認め合い、次第に敬語が無くなっていったんだろうなと思うと、想像するだけで幸せです。

Twitterなどでも話題になっていたみたいですが、遠藤さんの奥さん…麻佑美さんもかなり印象的でしたね。ただ、バックボーンや個性がリアリティ溢れるキャラの多い中で、かなり非現実的なキャラクターだったんだなと。悪くはないですけど、個人的にはかなり浮いて見えましたwなんか1人だけラブコメの波動を放っていないか?といった感覚で、可愛いと思いつつも、別作品のキャラのように見えました。てゆーか別作品だったら天下取れます多分。これぞアニメのキャラ!って感じw

 

あとはやはり、レジェンド杉江さんのアニメ教室のシーンも最高でした。アニメーションを楽しむ心……初心を忘れず、振り返ることがいかに大切なことかを教えてくれた、この第二幕の名シーンだったと思います。子供達の行進を色んな作画で描かれるシーンは圧倒されました。

 

……と、まぁ他にも見所はたくさんあるのですが。本当に展開的には、テレビシリーズのそれなんですよね、良くも悪くも。だからこそSIVAのエンドロールが流れるところで、正直「え?」となりました。

 

3.本作のテーマ(終幕)

 

確かに、ムサニ復活から、打倒げ〜ぺ〜う〜までの流れは面白かったです。けど、公開前から銘打っていた「ムサニの新たな挑戦」って、単に劇場版の企画を成功させたって、ただそれだけ?と。

 

しかし、そんな感情を一瞬でも抱いてしまったが、水島監督の思う壺。

この歯痒さに、SIVAのエンドロール後で全て応えてくれてました。

「中盤までは良かった。けどそこから終盤まで展開が早過ぎて、ラストではカタルシスが足りていなかった」

そんなSIVAの感想を井口さんが言い放っていましたが、これそのままそっくり、この劇場版SHIROBAKOという映画の、そこまでの流れのことなんですよね。本作と劇中劇が、完全にリンクした瞬間でした。

SHIROBAKOは元々テンポの早い作風ですが、テレビシリーズでは深くまで描かれていたプロの技や業界ネタのような部分は本作ではほとんど見られず、各キャラの葛藤も尺の都合でそこまで感情移入できるものでもなく、この一連の胸熱な展開に関してはテレビシリーズの方が面白かった、という感想があっても、正直おかしくないなと思いました。とはいえ、キャラ数の多さ故に、納得もできてしまうんですよね。

しかし、そう感じた人が正しいのだと、そう言わんばかりの井口さんの台詞に、自分は鳥肌が立ちました。あ、まだ終わらないぞ……SIVAも、劇場版SHIROBAKOも、と。

 

Twitterで公式アカウントさんが「納品公開3日前です!」といった旨のツイートをしていましたが、(実際にそうだったのかはさておき)このツイート自体も、本作の進行具合と、劇中劇SIVAのラストカットで切羽詰まっている状況とをリンクさせていたのだなと思うと、ちょっと芸が細か過ぎて笑いましたがw

 

そして完成した、完全版SIVA……話の内容は全く分からないのに、不思議と涙が出ました。それは、その圧倒的作画力から、本作に込められたテーマを感じ取ることができたからだと思います。

「希望なんて無い。自分で掴み取る」

結局、待っているだけでは何もなし得ない。どんなに泥臭くても、目的を持って、最後まで足掻き続ける。それが、夢を掴むということなのだと。希望というのは、都合の良い奇跡なんかじゃなくて、夢の為に足掻いたその過程であり、現実なのだと。

物語の途中で、丸川さんや宮森の口からも再三語られていたことですが、それを見事アニメーションとして訴えかけてくれた。SIVAも、この本作も、そんな締めくくりになっていたと思います。

かなりエッジというか、メタの効いたラストだったので、中には肌に合わなかった方もいる気もしますが、個人的には大満足で、テレビシリーズでは中途半端に終わっていた各キャラ(特に宮森)の成長を描ききることが出来たという観点からも、テレビシリーズよりも好きな〆方でした。もう続編は無くて良いと、スッキリ思えるくらいに。

 

 

 

 

……と、いう感想でした。

やはり思い返してみると、テレビシリーズよりも重たく感じましたね。

個人的な発想なのですが…SHIROBAKOという作品は、コミカルとシリアスが半々くらいの塩梅で同居している上で、

テレビシリーズはあくまでコミカルがメインで、その中にシリアスがあるのに対し、劇場版はその逆、って印象なんですよね。

 

で、やはり大衆的な見解だと、シリアスよりコミカルの方がウケは良いじゃないですか。だから、もしテレビシリーズと劇場版の、コミカルとシリアスの扱いが逆だったら、ここまで人気作になっていなかったんじゃないかな……と、思ってしまうくらい、個人的には重い印象を受けた劇場版でした。

とはいえ、どちらの作風がベースになっているかという話なだけで、あくまでコミカルとシリアスの割合自体は変えておらず、きちんとテレビシリーズと同じように楽しめるようになっていたというのも、さすが水島監督、さすがPA.WORKSです。

 

時間とお金に余裕があれば、何度でも劇場に足を運びたくなるくらい感動しました。少し度の過ぎた個人的な妄想を抱いているようにも思えますが、それを差し引いても、本当に素晴らしい映画でした。